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当社事例による集客多角化の導入プロセス Case2

事業拡大から新たな集客方法の導入プロセス

前回Case1で説明した通り、事業の拡大プロセスに伴って使う集客チャネルも変わりました。当社が自社で展開している不動産リノベーション事業は不動産会社へのサービス提供を行っています。

不動産会社にいかにわかりやすく自社のサービスを伝えて依頼してもらうかが重要になります。また、その都度のサービスのレベルによって客単価や訴求したいサービスも変わってきます。

集客に使える予算も次第に大きくなってきます。大きな予算になればなるほど、集客を正しいチャネルで行っていく効果が出てきやすくなります。

ここでは当社が実際に売上の成長とサービス内容の変化に伴って行ったアプローチの実例を記載します。

Case2_事業成長に伴う集客方法の変遷

不動産リノベーション事業は最初は小さい仕事しかオペレーション上もできなかったため、本当に小さな仕事(数万円単位)から始めました。

現在では1件当たり1,000万円を超える案件も対応しています。そういった意味では一般的なBtoBの事業者様の多くに当てはまる広い価格帯の集客プロセスを試せました。

広告費の投入金額の意思決定

ここで本題に入る前に少し意思決定に関するデータ分析の視点での説明をしておきます。「いくら広告費を使うべきか?」という点に関する意思決定です。

ある集客チャネルをテストします。例えば郵送DMで集客をテストする。例えば100通のDMを送って1万円のコストで10万円の売上があがるお客様を獲得できました。ここで月間の売上目標を1,000万円とします。

・100通のDM(1万円)

・お客様単価(10万円)

・月間目標売上(1,000万円)

この場合、単純にDMを100倍送れば目標の売上に達成するという事はわかりますね。

・目標に必要な広告費=100万円

基本的には全てこの単純なロジックで意思決定をしていくのですが、ここで複数の「変数」が入ってくるため意思決定が複雑になります。

例えば、

「DMを送るリストが1万通もない」この場合同じエリアに毎月10回も同じ内容のDMを送っても効果はあまり出ませんので、リストの補充が必要になります。

「他の広告媒体も併用している」この場合、どの媒体にどれくらいコストをかけるべきかを判断する必要がでてきます。

「客単価の低い顧客が増えすぎる」この場合、目標売上が達成できてもオペレーションが崩壊する可能性がでてきます。より客単価を上げる集客方法を別途試していく必要があります。

このように、複数要因を考慮していくら使うべきかを判断していく必要があります。ですが、基本的な考えは最初にケースで示したようにシンプルです。

当社の集客多角化プロセスではこのような変数も考慮して緻密に分析をして広告予算を決めていきます。

郵送DMでの反響

前回のStep1でご説明した通り、一番最初に不動産リノベーション事業でテストをした媒体はFAXDMでした。ですが、その後にFAXDMでは高額帯のサービス訴求が難しいのではないかと判断して郵送DMに切り替えていました。

その際の郵送DMとは当社の所在地の港区近隣の不動産会社向けにパンフレットを送付するという方法でした。

当時はラクスルのような簡易な印刷代行サービスも無かったため、ネットや紹介で見つけた印刷会社に印刷をしてもらい自分達で封入して出荷していました。

そのため、当然ですがある程度1部当たりのコストはかかっており、1通あたりのコストは送料を含めると500円近くかかっていました。

それでも、リノベーション事業といいつも当時はまだ小さな工事(壁紙の張替え等)しかできなかったため、反響率が高く1,000部も送るとしばらくは仕事には困らないくらいの反響が来ました。

というのも、これには裏の理由がありまして、不動産会社が簡単に発注する小さな工事というのは不動産投資物件のオーナーから預かっている物件の管理修繕工事がほとんどだからです。

毎月そういった管理物件で引っ越す方がいるとちょっとした修繕工事が発生します。そういった修繕工事が必要な層の顧客に刺さっていたのです。

毎月定期的にDMを出すわけでもなく、一定の間隔でDMを出すだけで充分な集客ができてしまう状況でした。そのためマーケティングよりもオペレーションの構築で忙しくなってしまう状況でした。

ただし、これではデータ分析ができないため不動産リノベーション事業を立ち上げた本来の目的であるデータ分析の技術の検証にいずれ戻らなければと思いつつも目の前の業務に忙殺されていました。

結果として、この郵送で資料を送付するというシンプルな集客方法で1年目で3,000万円、2年目で6,000万円近い規模の事業になりました。

ただし、途中から印刷と郵送コストの削減のためにDMの体裁は少し変更をしました。パンフレットを送るのではなくニュースレター形式の●●新聞という形式のレターで送付をしていました。

単なる宣伝では耳目を集めませんので、暇つぶしに見てもらう事も想定して作成をしました。

FAXDMでの反響

事業を開始して3年目くらいにFAXDMを試しに再度配信してみました。その際にこれまで受注できないと思っていた規模の案件も受注できたため当面の間FAXDMへの集客に切り替えました。

東京都内の主要な不動産会社のリストを集めて、月に2回程度のペースで配信を続けました。一定程度のクレームがありましたが反響も多く継続的な受注につながりました。

何より、集客のコストが下がりました。この時点でもっと早く検証を進めておくべきだったと反省をしました。自分達がベストだと思っている手法が必ずしも一番良い方法とは限らないからです。

こちらも郵送のDMと同様に定期的にデザインを変えて提案をする事にしていました。全部で30種類程度のデザインを持ち回りで使用して運用しました。

結果として3年目に1億円近い売上に到達しました。ほぼ1年間FAXDMのみで集客をしました。他の業界では難しい手法ですが不動産会社をターゲットにするにあたりとても効率的な集客手法でした。

ですが、この年をピークにFAXDMの配信は徐々に減りました。理由はリノベーション工事の施工レベルが進化していったためです。

当初は不動産会社向けに簡単な修繕工事、リフォーム工事の提供がメインでした。そのため訴求するDMもFAXでメインメッセージをドン!!と強調する内容で充分でした。

しかし、室内全体のリノベーション工事になるとデザインやどのような仕様であるかを写真も掲載して伝えていく必要があります。そうなるとFAXDMでは訴求が弱くなります。

ハガキDMでの効果

そういった経緯からFAXDMの次はハガキDMを活用するようになりました。これは単に両面のハガキではなく圧着で2枚折りまたは3枚折りになっているタイプのハガキです。

圧着ハガキを選んだ理由は圧着を開けて中身を見てもらえる確率が高く、結果として中身を読んでもらえる確率が高いからです。またコスト面でも通常のハガキDMとあまり金額差が無い点もメリットです。

そしてFAXDMと異なり写真を使えるというメリットがあります。リノベーション工事の施工事例等を訴求できるようになった点と、2枚折り、3枚折りのハガキの文章量はA4のFAX1枚よりも多くの情報が記載できます。

そのため、より詳し情報を不動産会社に届けるうえでも役に立ちました。また、客単価の向上にも大きく寄与した点があります。

1室あたりの施工単価が500万円を超えるような工事がリノベーション工事では多く、そういった規模の仕事を新規の取引先に依頼するには一定の信頼が必要になります。

その点においてはハガキDMを定期的に送る事で認知率を高めて新規の依頼につなげるという手法は効果があったかと思います。

また、このDMの作成運用においてもこれまではこういったDMを作成するにあたり、印刷会社との綿密な打合せが必要でした。

しかし、ラクスル等のインターネット上でそういった手続きを完結できるサービスが登場したのもこういった手法を容易に継続できた大きな要因です。

毎月デザインが変わるDMのために毎月印刷会社と打合せをして試し刷りをしてもらってという時間は取る事ができません。そのため自社でデザインしてそのまま入稿できるようなサービスはとても効率的でした。

このハガキDMを活用するようになってから、客単価が次第に上昇をし始めました。それはDMの効果もありますが、オペレーションが整備されて規模の大きい案件をこなせるようになったという点もあります。

4年目に1億5,000万円、5年目に2億2,000万円、6年目に4億4,000万円を達成しました。

コロナ渦を乗り切るために集客を多角化へ

事業開始6年目の後半にコロナ渦が起き緊急事態宣言が始まりました。これに際してこれまでのアプローチでは受注が難しくなるケースが予想されました。

そのため、これまでに経験した集客方法と新しい集客方法も含めて複数のアプローチを持って集客をする事にしました。特に初回の緊急事態宣言中は店舗を閉鎖する会社も多くリーチ方法を改める必要がありました。

在宅ワーカーに情報を届けるにはやはりインターネットでの集客を捨てる事はできません。そこで本格的にネットでの集客を展開する事にしました。

しかしながら、それがすぐにうまくいくはずがないという現実的な視点も持ち合わせていましたので、これまでに低コストでの集客が可能であったFAXDMの配信を再開して且つ配信数を2倍にしました。

また、ハガキDMに関しては初回の緊急事態宣言の中では読まれる確率が低いだろうと想定して配信数を絞りました。

さすがに一時的には集客は落ちましたが集客を多チャネル化した効果は長期化するコロナ渦での副産物として売上を伸ばす事になりました。

結果として7年目の売上は6億円を超えました。

Webでの集客

特にコロナのタイミングでWebでの集客の動きが変わったのが特筆すべき事でした。

以前はDMを送ってもWebサイトはほとんど確認されない不動産会社が多かったのですが、最近はWebサイトも良く確認してから依頼をしてくるケースが増えました。

DMを見てスマホでの検索をしてくるケースが多いため、スマホ連動をさせるような集客施策も考える必要が出てきました。

こういった観点からWebでの集客またはWebサイトをパンフレット代わりに与信として見てもらえるようなアプローチを行いました。

従来のホームーページではなくオウンドメディア形式で大量の情報を掲載する事でWebからの問い合わせや見積依頼を受けるというのを狙うのではなく、事前の情報共有や事業実績の確認をしてもらう意図で使ってもらう事に狙いを定めました。

ランディングページ等で直接の問い合わせを狙う方法も当然ありますが、この7年の間にネット広告のクリック単価が上昇し続けているため、受注コストが紙のDMと比べてもあまりメリットが無いという検証データも当社では取っていました。

そんな経緯からもWebでの集客は一定のコンテンツを作成して与信としての機能をまず高める事にしました。また、カタログ代わりに見てもらう事で実際に依頼して頂くにあたり余計なやり取りが減るというメリットもあります。

これはキーエンスのWebサイトのモデルの考えを多少参考にさせてもらいました。キーエンスでは非常に多くの商品情報が異常なほど詳しく記載されています。

Web経由での注文がどれくらいあるのかはわかりませんが、強い営業力で有名な同社ですので恐らく営業の前後でお客様が商品の情報を自社サイトで調べる前提であそこまで詳しく作っているのではないか?と推察しました。

営業マンが来た後にもう一度商品を調べて購入するか否か決める際に、非常に詳しい情報がWeb上にあると安心して購入の決断に踏み切れるという効果があるのでないでしょうか?

その点は楽天のあのロングページでの商品紹介も同じような効果があるのかもしれません。しつこいくらいの説明が購入を検討しているお客様にとってはメリットの方が大きいケースがあるのです。

当社は同様にWebサイトの情報量を厚くしつつ、DMと連動させるためにDMにWebのQRコードを入れて興味のあるお客さんがそこから入ってくるように仕掛けました。見込み客のクロージングをWebにやってもらう事にしたのです。

結果としてWeb経由でのお問合せを頂いたお客様はクロージングがしやすいという傾向を生み出しました。

集客専門サイトの活用

また、新たな集客手法としては特定の業界の集客に特化した専門サイトの活用も並行して始めました。リノベーションであればリノベーション工事を行うマッチングサイトがいくつかあります。

これまではどちらかというと職人を募集するにあたりそういったサイトを活用していたのですが、受注者側としてもそういったサイトを活用して集客を試みました。

競争は高いのですが、一定数を機械的に見積をこなしていけば一定の確率で受注できるというメリットがあります。

当然多くの参加者がいるため単価が下がりやすい傾向があるのですが、ある程度利益率の線引きが出来る会社であれば機械的に見積を大量に出して受注を決めるというスキームが作れればこう言ったサイトの活用も有効だと思います。

また、一定程度難しい案件には参加者が少ないという傾向もあります。そのため技術力に自信のある会社等は難しい案件にターゲットを絞ってアプローチするのも手です。

なお、当社では今後「公共事業」に関しても同じような集客のマッチングサイトに近い活用方法でアプローチができないか検討しています。

公共事業専門の情報サイトがありますので、そちらの案件から自社に合う案件を一定ラインクリアしているものは機械的に入札していけば一定の確率で受注していくのではないか?という仮説を立てています。

この仮説が成り立つと広告費ゼロで年間にある程度の売上が立つため新たな集客チャネルとしては利益率の向上に役立つのではないかと考えています。

マルチチャネル集客の構築と罠

このような複数の集客方法を試していって事業を作った当社ですが、この一年間はそれらの集客方法をマルチに組み合わせて使うようになりました。

それにより集客コストを下げつつ依頼案件を増やす事が出来るようになりました。また、特定の集客チャネルが機能しなくなった際に別案をすぐに用意できるというリスク分散としても機能するようになりました。

ある程度事業が大きくなってくると売上が踊り場で停滞する事があります。その原因はオペレーション側に問題があるケースもありますが、多くは集客が伸び悩む事で起きます。

集客がある程度安定して増えれば併せて組織化も進みます。こなせない量の仕事が来れば必然的に組織化しなければ仕事は回せないからです。

鶏が先か卵が先かの話ではありませんが、組織化を先にしようと思ってもそこに一定の仕事がなければなかなか効果が見えてきません。

また、集客を多角化してもそれをしっかりデータ分析できなければ広告費が増えるだけになってしまいます。単に集客を多角化するのは広告代理店に丸投げすればやってくれます。

1社で全てを対応してくれる広告代理店は少ないですが、複数社に依頼すれば「単なる多角化」はできます。ですが、じゃぶじゃぶに広告費を使う事になり、且つ一貫性の無い広告の出し方になる可能性があります。

ここで横断的に多角化した集客媒体を客観的に判断して適宜取捨選択できる機能が社内に必要になってきます。そうしないとあっという間に100万円単位で余計な広告費を垂れ流すといった事態になります。

この点に注意して集客の多角化を進めていく必要があります。

小さな案件を取って大きな案件を狙うという考えは正しいのか?

ここまで集客多角化について説明してきましたが、ここで少し話を脱線して、マーケティングのセオリーでよく使われている「小さな案件を取って、大きな案件につなげるように顧客を育てる」という概念について経験から意見を申し上げたいと思います。

こちらは例えばリノベーションやリフォーム工事の業界であれば、小さな小修繕工事を受注して、信頼関係を作ってから大きな工事の受注へつなげようとするアプローチになります。

どの業界においても法人顧客相手であれば同じようなケースはあると思います。ですが、当社が実際に経験したケースですとこれが成り立つのはかなりハードルが高いのではないかというのが実感です。

というのも、小さな案件というのも納品するには手間がかかります。それが大量に集まると何が起きるのか?恐らく人が足りなくなり品質が下がります。そうするとクレームが生じます。

結果として大きな案件につながるどころか大量のクレームが集まるだけになります。これが小さな案件を受ける側の現実ではないでしょうか?

また、依頼する側は小さな案件をやってくれる会社と大きな案件をやってくれる会社とを明確に分けて考えているケースがあります。例えばリフォーム工事の世界でも「小さな工事が出来る会社」と「大きな工事が出来る会社」とで明確に分けている依頼主が多いのです。

そこで「小さな仕事が出来る会社」にカテゴライズされると「大きな仕事」は来ません。それは単に「小さな仕事が得意だ」と思われているか「大きな仕事をする体制が無い」と思われていたり、過去に小さな仕事でミスを繰り返していて「大きな仕事が出来るわけが無い」と能力的な不足を疑われていたりと複数の要因があります。

小さな仕事から信頼を勝ち取って大きな仕事を取る。これが出来るのはある程度の規模があり、組織化されている会社ではないと難しいのではないかというのが実感です。

現実的には小さな仕事で忙殺されてしまって、大きな仕事がいつまでも取る事ができないというケースが多いのではないでしょうか?

実は当社もこのパターンにはまっていました。小さな修繕工事ばかりを行っていたため、些細なクレームも多く絶えず忙しい状態でした。組織が忙しいと活気があるためどこかそれに慢心していたのかもしれません。また、小さな案件は業績を安定させるという言い訳もあったのかもしれません。

しかし、安定はすれども本来目的としていた大きな案件の依頼はいつまでたっても増えません。売上も一定期間頭打ちになりました。それはよく考えてみたら当たり前で集客にあたり「大きな案件」を売ろうとしていなかったからです。

その点を改めて大きな案件のリノベーション工事だけをやる内容で不動産会社にDMを配信しました。そうすると「大きな工事をやる会社」として大きな仕事だけが来るようになりました。当然、大きな仕事は小さな仕事と比較して数は少ないですが、充分に小さな仕事をカバーするだけの売上があり結果として売上は伸びました。

小さな仕事を捨てる事で案件の受注が不安定にならないか?というこれもまた基本的なセオリー通りの疑問かもしれませんが、それを防ぐ意味でも集客の多角化を図っています。ある程度複数チャネルから一定サイズの仕事が入ってくるようにすることでリスクを回避しています。

また、副産物としてオペレーションの品質があがった事もあります。世の中の中小零細企業は客単価が安い商品を扱うほど経営が苦しくなるケースがあります。そして日々の仕事が忙しすぎる状態になります。逆に客単価の高い商材を扱う会社というのは比較的経営にも業務にも余裕があります。

当社も同様に、大きな仕事に絞るようになってからまず残業時間が大幅に減りました。そして、品質のレベルも向上しました。それは少ない案件に時間を費やせるようになったからです。結果としてお客様からリピートして頂けるケースも増えて経営の安定にもつながりました。

このような経験から当社の中では「大きな案件を最初から取りに行く」というスタンスで集客活動をしています。

Case2のまとめ

Case2の事業成長に伴う集客方法の変遷に関して下記にまとめておきます。

・広告費の投入金額の意思決定方法はシンプルだけど変数が入ると複雑になる

・郵送DMはセールスレター形式を採用した

・FAXDMでも高単価の商品を売る事ができた

・ハガキDMにより写真やより詳細な情報を提供して事業を成長させた

・コロナ渦にWebでの集客等の集客多角化を進めた

・大きな案件を取るためにも集客多角化は効果的

次回はCase3の実際に集客の多角化を行うにあたり、どのような方法で社内でマーケティング活動を進めたかを説明します。実は当社は広告代理店を一度も使わずにここまで経営してきています。100%自社運用でのマーケティングをしています。

その点のノウハウも含めてご説明をします。