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当社事例による集客多角化の導入プロセス Case1

最初に始めた事。そして失敗と検証。

当社の事業に2014年の夏頃から運営しているカドウリツRENOという「不動産リノベーション事業」があります。こちらは不動産会社向けにリフォームサービスを提供する事業として始めました。

不動産会社が仕入れたマンションをリノベーションして再度販売する事業を手伝っています。工事だけではなく不動産会社が購入する物件を当社で仲介するケースもあります。

こちらの事業の直近の受注高は月間で1億円を超えています。工事出来高で換算すると年間7億円~8億円程度の出来高が見込まれます。

そもそもこの事業を始めたきっかけは「自社のデータ分析の検証」でした。お客様にデータ分析の技術やサービスを提供するにあたり、その効果を自社でまず検証したい。

そういった経緯から比較的参入のしやすい不動産業界やリフォーム業界に目をつけて参入しました。正直、ここまでの規模にするつもりはありませんでしたが、結果としては現在では当社の主たる事業となっています。

ここではその新規事業の立ち上げから現在に至るまでに実行した、集客方法とその集客を複数チャネルで展開する集客多角化のプロセスについて説明します。

Case1_集客チャネルのアタリを探る

最初の一年間のうちに実行したプロセスにおいてうまくいったものと、もっとこうすれば良かったという反省点もあげておきます。

リストの構築の成功

不動産リノベーション事業においてターゲットとする顧客は、一般のエンドユーザーではなく不動産会社になります。なぜ一般のエンドユーザーではなく不動産会社をターゲットにしたのかというと需要の再現性の観点からです。

一般ユーザーは多くが生涯において一度しかリノベーション工事はやりません。しかし、複数の物件を扱う不動産会社では会社によっては毎月何件もリノベーション工事をやります。結果として単価は多少安くても取引の機会を多く得られ集客コストも徐々に下がると判断したからです。

また、別の面においては不動産会社というのがリスト構築の観点では非常に取り組みやすかったという点があります。不動産会社は許認可業者です。必ず宅建業許可を得ています。

そのため、宅建業者は公に国土交通省のサイト等から検索を掛ければ全て出てきます。すなわちリストの構築がしやすい業種であるという点です。どこにターゲット顧客がいるかわからないというケースの場合は大量にあてずっぽうなアプローチが必要になります。

これが例えば、リノベーション工事の個人客の集客になると、どこにターゲットがいるかはわかりません。そうなるとネット広告や折り込みチラシ等アプローチ方法は限られてしまい、且つ大量に広告を撒く必要があるため、広告宣伝費が非常に高コストになります。

不動産会社のリスト収集は宅建業許可を取得している会社の中にも玉石混交であるため、ある一定の業務実績が見込まれるリストを新たに探しました。

それは皆さんもよく知っている不動産関連のポータルサイトです。そこに掲載をしている会社のリストをターゲットリストとしました。リストの作成方法はいくつかやり方がありますが、極端な話、コピペでも何でもターゲットとしているリストが一覧であれば時間さえかければリストは集められます。

そのため、どうやってリストを集めるかよりも、どこにリストがあるのか?その方がよほど重要です。結果としてこの不動産会社をターゲットにするという戦略は当たりました。繰り返しの依頼も多く、また反響率も比較的高いリストであることがわかりました。

集客コストと業界特性

また、不動産会社をターゲットにしたもう一つの理由があります。それは「未だにFAXを使用している」という点にあります。日常業務において現時点においてもFAXを多用しています。

そのため、FAXDMに対するアレルギーがあまり無い業界なのです。FAXDMとはFAX番号宛てに白黒書きでデザインしたDMを送付するアプローチです。

このFAXDMは1件10円程度で非常に低コストで配信できます。半面、非常にクレームも多くもらうDM手法になります。そのため使用できる業界がある程度限られます。

特に中小規模の会社を中心にアプローチする場合には家庭用FAXを使用しているケースもあるためハードクレームになりやすく避けた方がいい業界も多くあります。

その点、不動産会社は日常業務においてもFAXを多用しており日常的に業務と無関係な広告や案内のFAXが送られてくることがよくあります。

そのため、あまりクレームにならないというメリットがあります。また、同様によくFAXを見てくれている業界でもあるため、このFAXDMという低コストな集客手法が一定の反響があるのではないかという仮説を立てました。

低コストな集客媒体が使えそうで、且つ一定の反響があると見込んだら試しにテストをしてみます。

テストは最速且つ最小労力で実践する

業界のあたりを付けたらまずテストをします。本当に不動産会社のリストとFAXDMによる反響があるのかをまずテストしました。

この時点では特にWebサイトもまだ用意せずにテストをしました。最低限のサービス提供する体制を整えてミニマムのサービスのみ訴求して提案しました。

というのもこの時点ではまず事業自体が成立するのか否かもハッキリしていないレベルでのテストだったからです。市場がまずそこにあるのか。自分達が参入できる程度の反響があるのかを先にテストして、もしそれが難しいようであれば方針転換するつもりでテストしました。

この姿勢は新規事業の導入期のアプロ―チとしては結果的には正しかったと考えています。

もし仮にある程度のサービス環境を構築してからテストマーケティングを行って、反響が全くなかったり、思っていたのと違う反響であった場合、もはや投資をある程度進めている段階であるため戻るに戻れなくなります。また、損失も大きくなります。

当時、約1,000社程度のリストを基に比較的安価で簡易なサービス(例えば「壁紙の張替え」のような客単価5万円程度のサービス)に関するDMを作成してFAXDMを配信しました。そうすると結果として3件程度の反響がありました。

これによりある程度の不動産会社のリストにリフォームに関する市場反応が見込まれる事がわかりました。ここまでにかかったコストはFAXDMの費用とお客様への説明資料の数万円です。

マーケティングテストとしては非常に低コストで検証する事ができました。

ただし、FAXDMでこのまま集客を進めるのは難しいのではないかと当時は考えていました。それはFAXDMはあくまで低単価のサービスに対する訴求に効くだけで高額帯の訴求は難しいのではないか?

という仮説が当時はあったからです。これがそもそもしっかり実証実験まで詰めておけば良かったのですが一般的に言われている「一般論のバイアス」にとらわれて当時は高単価のサービスをFAXDMでは訴求しなかったのです。

この段階で当時は別の媒体のテストを先に進める事にました。次に着手したのがテレアポ、郵送DM、ネット広告です。ここで少し遠回りなアクションを取ってしまいました。

最初からしっかりしようとすると本末転倒に

テレアポやネット広告のテストを進めるにあたり、さすがにWebサイトくらいはきちんとしていないとダメだろうと考えてWebサイトの開発を進めました。

これがそもそも失敗だったと今では反省点となっています。結果としてWebサイト経由での注文というのは不動産会社からはあまり来なかったのです。

業務がFAXが主流という事もありますが、よくよく考えたら不動産会社で働く人の動線を考えれば明らかで、外回りやお客さんの接客が中心の業務です。

ゆっくりネットで業者を探そうというアクションはあまりなく、むしろ会社やお店でネット検索をしていると怒られてしまうのが一般的です。

また、今であればスマホ経由での検索というチャネルも考えられますが7年程前ではまだそこまでスマホ経由での検索も期待できませんでした。

それにも関わらず、ここで当時Webサイトの構築に2ヵ月程度の期間を要してしまいました。ネットでの検索による集客のテストは簡単なランディングページ1枚でテストをすれば検証結果は得られたはずです。

どこかで「まずちゃんとしないと」という集客チャネルのアタリを付けるという目的というよりもきれいに仕事をしようという気持ちが優先してしまったのだと思います。目的ではなく手段が優先してしまった失敗例です。

思い込み・バイアスの排除が必要

もう一点、思い込みという点での反省点があります。先述の通り、一定単価以上の商品やサービスはFAXDM等の安い媒体からは受注できないという思い込みでした。

FAXDMでのテストを行った後にネット広告やテレアポや郵送DM等のアプローチを検証しました。当社が提案している集客の多角化を試みました。

ですが、郵送DMで初期に大型の案件の受注が出来てしまった事から「それが正解」というバイアスが働きました。当時、それ以上深く検証をしなかったのです。

また、新規事業で大きな案件を受注してしまうと当面はその納品に関する「オペレーション」に忙殺されます。結果として一度出た正解が「本当の正解なのか」を検証せずにそのまま同じやり方の集客方法を繰り返してしまうという罠にはまりました。

1年以上経過してから、たまたまFAXDMで高額帯商品の訴求をしてみたら普通に注文が来たため、その際にDMによる割高な広告媒体を使っていため、膨大な広告費のロスが発生していた事に気づきました。

成長と時間不足のジレンマ

こうなった原因の一つはオペレーション業務に時間を忙殺されていたというのも大きな原因です。既存のDMという集客チャネルで次から次へと依頼が来ます。

そうするとそれを処理するのが第一になり、次第に業務を処理するために従業員を採用します。そうすると従業員の雇用のために確実に結果が出る集客チャネルに依存し始めます。

第三者として冷静に広告費の検証や集客チャネルの検証をするスキームがあれば結果として損失は防げたのではないかと思います。

Netflixに経営状況の悪いレストランの業務を改善する番組があります。登場するお店のオーナーが共通して言う言い訳は「課題があるのはわかっているが、改善する時間が無い」です。

これは業績が良くないお店や会社のオーナーの共通の傾向だと思います。そう言っている我々も自分達でこういった集客に関するサービスを提供しているものの、いざ新規事業が始まると「時間が無い」状況にはまりました。

今思えば、時間は必ず足りなくなるので、事前に時間が足りなくなる前提で集客に関しては事前に複数のアプローチを検証して、いつでもそれを使える状態にしておく事前の準備が必要だったと思います。

サービスの成長と共に使う集客媒体も変わる

また、新規事業のサービスレベルが上がってくると使う媒体も変わってきます。FAXDMでの集客効果は高かったのですが、当社は今FAXDMは行っていません。

それはよりデザイン性や価格帯の高いリノベーション工事のサービスや、不動産会社の物件を仕入れるプロセスまでお手伝いするビジネスに事業が変わっていったからです。

より詳しく、より鮮明に情報をお伝えする必要があるため、FAXDMでは訴求が難しくなりました。そうなってくると使う媒体も変わってきます。

今ではハガキDMからWebページに誘導して複数の施工事例を見て頂くスキームを導入しており、より多くの情報をDM経由で取って頂くようにプロセスを組んでいます。

ただし、これは全ての商材やサービスに良い方法というわけでもなく、結果として集客コストが割高になって採算が合わなくなるケースもあります。そのため、自社の商品やサービスの特性に合わせて集客方法は検討していく必要があります。

また、集客方法はずっと同じやり方をこすり続けると反響は落ちてきます。商品と同様に集客チャネルや広告のクリエイティブにもライフサイクルがあります。

当初は反響が良くても次第に消費者が慣れると反響は落ち、衰退していきます。ですから、同じ集客チャネルであってもマメにクリエイティブを変える等のアクションが必要になります。

そして新しい集客チャネルも時代の変化と共に登場します。7年前にSNSで集客をするという考えはまだ主流ではありませんでした。

ですが、現在では我々が行っているリノベーション工事ではインスタやTiktokで施工事例を見せてそこから依頼を受ける会社もあります。

自社の受注状況を踏まえて、どういった集客チャネルがベストであるかは絶えずバージョンアップしていく必要があります。

Case1のまとめ

Case1の集客チャネルのアタリを探すにあたり、当社が実際に行ってきた事、こうすれば良かったなと思う点を下記にまとめます。

・ターゲットリストを定める

・最小コストでテストをする

・複数のチャネルを最初からテストする

・テストは出来れば複数回行う方がいい

・思い込みバイアスに注意する

次回はCase2の実際に事業拡大に伴って実施した集客方法の改善プロセスについて説明します。どれくらいの売上までどの媒体で拡大したか、どの段階で新しい集客チャネルを導入したか。そして、どういったデータ分析の結果を踏まえて判断をしたかを説明していきます。